自分達の関係は恋人とは少し違うように思う。
彼女に接しているとまるで父親のようだと言われるし、自分もあながち間違いではないと思う。
かといって彼女を全く異性として見ていないと言えば嘘になる。
この曖昧な想いの中で確かなのは、彼女が何よりも大切だということだけ。
失うことが怖くて、守りたくて、出来るだけ傍にいて欲しい。
それは恋愛や家族愛とは違う愛情で、独占欲に似ている。
勿論、彼女の意思を尊重したいとも思う。
だから、願わくば、彼女も同じ気持ちでありますよう――。
何とはなしに目で追っていたソフィがこちらを振り向く。
突然のことだったので、ばっちり目が合ってしまった。
逸らすのも悪い気がして、アスベルは彼女の大きな双眸を見つめた。
澄んだ瞳が、自分の考えていたことを見透かしているような錯覚を覚える。
「アスベル」
自分への呼びかけではなく単に呟いただけだったらしく、ソフィはアスベルが返事をする前にふわりと微笑んだ。
アスベルの心も一緒にふわりと軽くなる。
「ソフィ」
少女の名を唇にのせ、アスベルも微笑み返す。
空気も光も、全てのものが自分達を包み込んでくれているようだった。
俺と君の事情
ソフィが笑う。
自分も笑う。
ソフィが自分を呼ぶ。
自分もソフィを呼ぶ。
ソフィの隣に自分がいて、自分の隣にソフィがいる。
そんな些細なことがたまらなく幸福で、只、彼女を大切だというこの気持だけを大事にしていこうと思った。