笑顔の溢れる場所
タカオにはマザコンと呆れられ、レイにはいい加減母親離れするべきだと窘められ、カイにはため息をつかれた。
キョウジュはフォローしてくれたが、その顔は苦笑していた。
マックスだって彼らの言い分は最もだと思うし、そうなるべきだということも分かっている。
ジュディだってその方が安心するだろう。
しかし、頭では分かっていても、得てして心はついて行かないものだ。
マックスは飛び立つ飛行機を見送りながら、これまで何度となく味わってきた淋しさを感じていた。
数日帰国した母は、今日再びアメリカへと戻っていく。
今回こそは笑顔で送り出そうと思っていたのだが、やはり上手くいかなかったようで、結局ジュディに心配そうな顔をさせてしまった。
ジュディを乗せた飛行機が、空の向こうへ消えていく。
見上げた空は、マックスの気持ちとは真逆の清々しい青空だ。
マックスは飛行機が見えなくなっても、しばらくぼうっと立ち尽くしていた。
いつまで経っても大人になれない自分が情けなかった。
しかしずっとこうしていてもしょうがない。
マックスは取り敢えず空港の外へと向かった。
歩きながら、これからどうしようかと考える。
日はまだ頂上に近い所にあったが、父の待つ家へ帰ろうか。
太郎は店があるため見送りには来れなかったが、いつものように優しく迎えてくれるだろう。
けれど……。
思考に反して、向かった先はタカオの家だった。
荘厳な木ノ宮家の門をくぐると、庭先から賑やかな声とベイのぶつかる音が聞こえてくる。
それだけで沈んでいた気持ちが浮上した。
小走りで庭へ回ると、見知った仲間達の姿があった。
タカオとレイがバトル中で、少し離れた場所にデータを取るキョウジュと勝負を見守るカイがいる。
タカオ達の威勢のいい掛け声に呼応して、ベイが唸る。
その回転音とぶつかる衝撃音が耳に心地いい。
この音を聞いているだけで、気持ちが高ぶる。
そのまま2人のバトルを眺めていると、マックスに気付いたキョウジュが声を上げた。
つられて、3人の視線もマックスへと向けられる。
注目され、少し気恥ずかしくて、マックスは照れ笑いをする。
それに彼らも笑って返した。
この場所は不思議だ。
どんなに気落ちしていても、自然と笑ってしまう。
「何だ、もっとしょげてるのかと思ったけどフツーそうじゃん」
「今日はもう来ないのかと思ってたぞ」
タカオとレイがからかい交じりに言う。
これが彼らなりの優しさなのだ。
「来たなら一勝負していけ」
こちらに近づいてきたカイが、ドランザーをマックスに向けた。
「OK!やろう!」
マックスもドラシエルを取り出し、カイの前に進みでる。
タカオとレイがそれぞれのベイを掌中に収め、場を2人に譲るために一歩下がった。
ドラシエルをシューターにセットし、構えて、カイと向かい合う。
不敵なカイの視線を真正面から受け止めると、バトル前の心地いい緊張感に全身が包まれる。
加えて、親しい者だけの非公式な場が、マックスの気持ちを暖かくする。
ついさっきまで感じていた淋しさは、今や欠片も残っていなかった。
「3、2、1――」
タカオがカウントを始める。
それに合わせて、とくんとくんと心臓が強く脈打ち始める。
マックスはワインダーに掛けた指に力を込めた。
BLも好きだけどみんなでわいわいやってる友情ものも好きです。
ただ多人数を書くのは苦手なのでこんなのが限度ですが^^;
(12.11.06)