Lloyd + Collet + Genius

In short,it means I love you.

ジーニアスがちらりと後ろを見やると、苦笑するコレットと目があった。
ジーニアスは溜め息を吐く仕草をしてみせる。

リズム良く続いていたチョークの音がピタッと止まり、それと同時に、今の今まで黒板の上を滑っていたチョークがリフィルの手から放たれる。

気持ちの良い空気を切る音をさせ、吸い寄せられるように狙いを仕留めたそれは、気持ち良く夢の世界でたゆたっていた彼の意識を覚醒させるのに十分な威力を持っていた。

「いってえ!!」

机にくっつけていた顔をがばっと上げ、ロイドはチョークの襲撃を受けた頭を押さえて叫ぶ。
そして自分が教室中の注目を集めていることに気付いて、はたと動きを止めた。

「は、ははは……」

状況を改善しようと無理矢理笑いを浮かべるも、静まり返った教室には虚しく響くばかりだ。
助けを求めて視線をさまよわせるロイドだったが、ジーニアスには諦めろと目で諭され、コレットには頑張れ、と両の拳を握ってみせられた。
ロイドはうなだれて、恐る恐る黒板の前で青筋を立ててにこにこと笑うリフィルを伺う。
明らかに彼女の目は笑っていない。

「ロイド」

リフィルの形の良い唇から最終宣告が告げられる。

「私が良いと言うまでバケツを持って廊下に立ってなさい」

ロイドに反論の余地を与えないとでも言うように、無情にもタイミング良くチャイムが鳴り響いた。




「ロイドって本当にバカだよね」

とぼとぼと廊下へ出て行くロイドを見送って、ジーニアスはコレットの机までやってきた。
呆れながらも彼の声には慈しみの色が滲む。

コレットはいつもは自分よりも低い位置にある顔を見上げる。
ロイドをバカにする態度を取っていても、それが彼の優しさの裏返しだということがコレットには分かる。

「きっと良い夢を見てたんだよ」
「いや、それフォローにならないから」

ぱちぱちと瞬きをし、コレットはうーん、と首を傾げる。

ふとロイドの声が聞こえてきて、2人はドアへと顔を向ける。
ドアの隙間から鷲色が覗いている。
どうやらからかわれているらしく、何やら少し言い合った後、数人の子供達がドアを開けて笑いながら教室に入ってくる。
それをロイドは悔しげに見ていたが、2人と目が合うとしょんぼりと眉を下げた。

「もう、情けない顔」

ジーニアスがやれやれと息を吐き、コレットは困ったように笑みを漏らす。

「困った友達だ」
「私達も、ね」

2人は顔を見合わせると、言葉を交わすことなく示し合わせたようにロイドの方へ向かう。

「ローイド」
「ほんと懲りないねぇ」
「うるせーな。何しに来たんだよ」

またからかわれると思ったのか、ドアから顔を覗かせた友人2人にロイドは口を尖らせる。

「別に?ねぇ」
「うん、別に何でもないよー」

そう言って、ロイドを挟んでコレットとジーニアスが両隣に立つ。
ロイドは初め驚いたように目を見開いたが、すぐに2人の意図を察して、照れたように笑った。

「2人も罰受けさせられてると思われても知らねーぞ」
「僕とコレットは大丈夫。日頃の行いが良いから」

ジーニアスの憎まれ口さえも嬉しくて、ロイドはそーですか、と言い返しつつも顔がにやけるのを抑えられなかった。
バケツで両手が塞がっているため口元を隠すことが出来ず、それをジーニアスが気味悪げに横目で見る。

「あ、リフィル先生」

コレットの声につられてロイドとジーニアスが廊下の先を見ると、呆れた顔の、それでいて予想の範囲内だと言いたそうなリフィルが立っていた。

「コレットとジーニアスは何をしているの」
「私も少しぼーっとしていたんです」
「僕も。同罪なんだから、ロイドだけ立たせる訳にはいかないでしょ」

分かり切った2人の嘘にリフィルは溜め息を吐くと、教室のドアを開く。

「もうチャイムが鳴るわよ。3人とも中に入りなさい」

リフィルがロイドの罰の終了を告げて、先に教室に入る。
3人はリフィルの背を見送ってから、上手くリフィルの気を削げたことに顔を見合わせて笑い合った。

ロイドが大好きなジニコレが好き。

(10.06.12)

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