子猫が不機嫌そうな顔をして俺の部屋までやって来た。
その可愛い顔を思いっきりしかめているくせに、耳は俺が喋る度にぴくぴくと動き、尻尾はだらんと垂れている。
何も言わずとも、それだけで拗ねているのだと分かる。
ここ最近忙しくて構ってやれなかったから。
構って欲しいくせに、プライドの高いこいつは素直になれなくて、でも淋しくて、それでこんな顔をして俺の所に来たのだ。
「ばーか」
子猫が喋った。
否、ジーニアスが喋った。
「何にやにやしてるの。気持ち悪いよ」
「別にー?お前こそどうしたんだよ。俺の部屋まで来るなんて珍しいな」
わざと素っ気ない言い方をすれば、ジーニアスの顔が僅かに歪む。
だが、すぐに顔に力をこめて眉間の皺を深くする。
強がっているのなんてバレバレなのにそれを貫こうとする、そんな所も可愛いと思ってしまう。
「ロイドが淋しがってるんじゃないかと思って」
淋しがってるのはお前だろ。
何てことは流石に言わない。
実際俺もジーニアスが足りなくなっていたから、遠慮なくジーニアスの腕を引いて彼の小さな体を抱き締める。
腕の中で、強がりやな子猫が安心したように体の力を抜いた。
「ありがとな」
「……どう致しまして」
ジーニアスを足の間に座らせ、包み込むように抱き締める。
さらさらとした銀糸の髪を梳いてやれば、くすぐったそうに首をすくめた。
けれど嫌がっている感じではなく、嬉しそうな声を零して笑う。
つい先程までの不機嫌な顔はどこにもない。
そんな気分屋な所も子猫のようで、俺は思わずくくっと笑ってしまった。
途端にジーニアスの眉間に皺が寄る。
俺は慌てて、機嫌を取ろうとジーニアスの額に唇を落とした。
まだ不満そうな顔をしつつも、ジーニアスは拒まない。
俺はゆっくりと目頭、目尻、頬の順にキスをする。
ジーニアスのぎゅっと閉じられた目やうっすら朱が差した頬なんかがこれまた可愛くて、俺はたまらずジーニアスの唇を食んだ。
「ん……」
キスの合間に漏れたジーニアスの声に、ぞくりと背筋が粟立つ。
抑えがたい衝動と葛藤しながらキスを深くしていく。
ゆっくりとジーニアスの体を横たえてから、唇を離した。
「ヤらせて?」
「……ダメって言ったら止めてくれるわけ?」
「ダメなのか?」
「……別に」
ジーニアスがぷいっとそっぽを向く。
言わせるな、ということか。
それならば、と、俺は顔を逸らしたせいで露わになった首筋に唇を這わせる。
服の間から手を忍び込ませて素肌を撫でてやると、ジーニアスの熱っぽい息が俺の耳朶をくすぐる。
下半身がきゅうっと切なくなった。
俺は性急だと思いつつも、服の上からジーニアス自身を握る。
ジーニアスが鼻にかかった甘い声を上げ、とっさに口を覆おうとした。
俺は空いている方の手でそれを遮り、ジーニアスを見下ろす。
「声、聞かせて」
そう言って、握り込んでいる手に力を込める。
ジーニアスの体がびくりと反応する。
ジーニアスは赤くした眦に涙を湛えて俺を見上げ、黙考するように数度瞬いた。
そして、震える唇で小さく俺の名を呼ぶ。
俺は自然と口の端を上げた。
ジーニアスの手を拘束を解いて、その赤く熟れた唇を指でなぞる。
なぁ、もっとその可愛い声で鳴いてくれよ。
ロイドが変態臭い。
にしても「ジーニアス可愛い」しか書いてないな、この文章(´・ω・`)
(10.10.31)