以前そうしたように窓を押せば、それはすんなりと自分の侵入を許した。
無用心だと思いつつ、そのまま室内に入る。
彼女はやはり、以前と同じように寝台に横になっていた。
刹那、と自分の名を呼んだ気がして、自然と頬が緩んだ。
いつまでもそんな関係が続けられるはずがない。
誰かがそんなことを言った。
誰が言ったのかは覚えていない。
どうでも良いことだったからだ。
というより、目を背けていた事実を指摘されて動揺していたのかもしれない。
そんなこと分かっている。
そう反論することも忘れて、その場に背を向けた。
そして今、何故か自分はここにいる。
刹那は寝ているマリナを見下ろす。
「マリナ」
小さく呼びかけてみるも、マリナが起きる気配はない。
先ほど名を呼ばれた気がしたが、自分の夢でもみてくれているのだろうか。
嬉しくないわけではない。
だが、お気楽な彼女に腹が立つのも事実だ。
彼女は分かっているのだろうか。
姫君とテロリストの恋に明るい未来などないのだということを。
自分だけがこんなに悩まなければいけないなど、不公平な気がした。
―――それとも、マリナがいなくなれば俺は楽になれるのだろうか。
そう思ったとたん手が動いていた。
―――息苦しい。
突然うまく息が出来なくなり、マリナは目を開けた。
目の前にいるのが誰か分かるのに、さほど時間はかからなかった。
何故彼がここにいるのだろう、と覚醒しきっていない頭で考える。
これはもしや夢の続きなのだろうか。
どんな夢だったかは覚えていないが、ひどく幸せな夢だったので国の安泰か彼の夢だったのではないかと思う。
そして漠然と、彼の夢だったのだとマリナは思った。
これが夢なのか現実なのかは分からない。
分かるのは、この息苦しさが彼によるものだということだ。
正直、いつかこんな日が来ることは分かっていた。
自分が刹那の重荷になるだとうと感じていた。
それなのに、刹那を手放すことが出来なかった。
離れ離れにならなくてはいけないぐらいなら、愛しい人の手で殺される方が何倍もマシだ。
だから、夢であろうと現実であろうと、これが自分が選んだ未来の行く末なのだ。
もはや、私の刹マリでマリナがおかしいのはお約束。
(08.08.11)