「ブリタニアなんか大っきらい!」
7年前、幼かった彼女は、僕等のささやかな幸せを奪っていく戦火を睨みつけながら、そう言って泣いた。
「どうしてブリタニアの味方をするの!?」
1年前、再会した彼女は、ブリタニア軍に入隊したと言った僕を困惑と悲しみのないまぜになった顔で睨みつけ、言葉の限りに責め立て、最後にはこらえきれず泣いた。
何年もの月日を共に過ごし、楽しい思い出も沢山あったはずなのに、思い出すはいつも泣き顔ばかりだ。
そのことに淋しさを感じる自分に苦笑しつつ、スザクはに銃を向ける。
<あいつ>に従う意志を表す黒い制服に身を包んだは、向けられた銃の先を無表情に見つめた。
けれど、スザクはなかなか引き金を引かない。
「どうかしたの?殺さないの?」
ナイト・オブ・セブン様、と最後に嫌みっぽく付け足す。
こんな会話でも、とのひとときを惜しんでいる自分がいる。
「……殺されたいの?」
僅かに声が震えたが、気付かなかったのか気付かないふりをしているのか、は指摘することなく答える。
「そんな訳ないでしょ」
吐き出すように言った後、でも、とは言葉を区切る。
少しの間逡巡し、そして、――。
「スザクに殺されるのなら悪くないかもね」
僕の目の前で彼女は、ずっと思い出せないでいた笑顔を浮かべて、そう言った。
棄てられない
コイゴコロ
(泣いてくれる方が良かった)