つくづく、黙っていれば天子のようだ、と思いながら、は秋の寝顔を見下ろした。
規則正しいリズムを刻む寝息を確認し、はリベザルから聞き出した<玩具>を取り出した。
★
「」
秋がへたり込むを笑顔で見下ろす。
だが、名を呼ぶ声には感情が込められておらず、に向けられた目も笑っていない。
秋と喧嘩したことは幾らでもあるが(大半がの空回りだが)恐怖を感じたのは初めてで、は少しでも秋から離れようと後ずさる。
「逃げるの?」
許さないとでも言うように、秋は膝を折り、床についたの手に自分の手を重ねる。
今までにないくらい間近に顔を寄せられ、は息を呑んだ。
「僕の嫌いなもの、誰に聞き出したの?ザギ?」
面白半分日頃の恨み半分でが秋に使った蛇の玩具を片手に、秋が問う。
は首を横に必要以上に勢いよく降って否定した。
「じゃあリベザルか」
秋の断定口調に思わず動きを止めてしまったが、鎌をかけられたのだと気付いた時にはもう遅い。
「へぇ、リベザルなんだ」
いつもより低めの声がここにはいない少年の危機を物語っている。
「わ、私が無理矢理聞き出したの!悪いのは全部私だから!だ、だから、リベザル君を叱らない、で……」
慌ててリベザルを庇おうと声を上げただったが、秋の人の悪そうな笑みに声が尻すぼみになった。
ヤバい、と今までの経験から分かる。
絶対に良くないことを考えている顔だ。
「ふーん。別にそれでもいいけど」
それでもってどういうこと?
問いを尋ねる前に秋に押し倒され、後頭部をしたたかに打ちつけた。
見上げれば、にこにこと笑う秋と目が合う。
「悪い子にはお仕置きしないと、ね?」
後頭部の痛みと秋の恐ろしい発言に、の目尻に涙がにじむ。
秋はそんな彼女の目の端に唇を寄せ、舌先で目の縁をなぞるように涙をすくった。
「ちょ、汚い……っ」
なんで?と、秋が顔を上げる。
「綺麗だよ」
そう言って、秋は怖いくらい綺麗な笑顔をに向けた。
綺麗なエガオ
(魅せられる)