「アリババくん、アリババくん」
「ん?どうした?」
向かい合った君は優しい目で僕を見下ろしてくる。
今だけじゃない。
いつもそう。
優しい優しいアリババくん。
僕の大好きな大好きなアリババくん。
優しい君が僕は好きだけれど、同時に好きじゃないとも思ってしまう。
だってその優しさは僕だけに向けられるものじゃないから。
僕にだけ優しくするなら、それは本当に優しい人とは言えないってのは分かってる。
アリババくんは本当に優しい人だから、僕にだけ優しくするなんて出来ないんだよね。
なら、世界が僕とアリババくんだけになってしまえばいいのに。
……嘘。
僕はモルさんもシンドバッドおじさんも皆みんな好きだから、それはダメだ。
あーあ、どうすればいいのかな。
「どうしたんだよ、変な顔して」
眉間に皺を寄せて黙り込む僕の頭を、アリババくんがポンッと軽く叩く。
僕は非難するようにアリババくんに飛びついた。
腰に腕を回しておなかに顎をくっつけ、わざとらしく頬を膨らませてアリババくんを見上げる。
「ひどいなあ!変な顔だなんて」
アリババくんは笑って、ごめんごめん、と謝った。
そして機嫌を取るように僕の背中に腕を回し、額に唇を寄せる。
本当にひどい。
僕にとってはすごく深刻な問題なのに。
まあ、君にはこんなこと言えないんだけどね。
子供じみたドクセンヨク
(君が好きすぎて困る!)