今更そんなの有り得ない

*現代幼馴染パロ



「好きだ」

そう、彼に言われたのは、まだ中学には上がっていなかった頃だったように思う。

母親のお腹にいる頃からの付き合いの私にとって、彼は友人と言うよりむしろ兄妹といった存在で、恋愛対象にはほど遠かった。
だから彼に向けられた好意に戸惑って、何故だか怖くて、私はその場から逃げ出してしまった。
驚いた彼が私の名を呼んだのが聞こえても、私は振り向きもせず、家に着くまで走り続けた。
その夜は翌日彼にどんな顔をして会えばいいか分からず、あまり眠れなかった記憶がある。
しかしそれは杞憂に終わった。
次の日、彼はまるで告白などなかったかのように私に接してくれたのだ。
私は彼の優しさに甘え、私達は仲の良い幼なじみを続けることとなった。

しかし今思えば、あのときから確実に私達の関係は変わっていった。
いつの間にか、私の中で彼の存在は兄でも弟でも友人でさえもなく、唯ひとりの男の子になっていた。

それを自覚したのはつい最近のことだ。
彼と共通の友人であるルルーシュにそのことを話すと、呆れ顔で「遅い」と言われた。
「それで、いつまで待たせるつもりなんだ?」とも。

夕焼けの帰り道。
スザクのこぐ自転車の後輪にの上に立ち、ルルーシュの言葉をぼんやり思い出す。
スザクは待ってくれているのだろうか。

「どうかしたの?」

穏やかな声が前方からかけられる。
何でもない、と誤魔化せば、スザクは深く追及してはこないだろう。昔のように。

けれど今はその優しさを淋しく感じてしまう。

スザクの首に腕を回して肩に額を寄せると、とくんとくんとスザクの鼓動が伝わってきて、有り得ないと思っていた気持ちがすんなり胸に染みてきた。

「好き」

ずっと口にするのを躊躇っていた想いがするりと零れ落ちた。
小さな呟きだったが、確かにスザクは聞こえていたようで、そっと私の手に片手を添える。

「今更だな」
「ごめん」
「許す」

落ち着いた声音に反して、スザクは耳まで赤くなっている。

「ずっと好きだったよ」

二度目の告白は、素直に嬉しいと思えた。
かつて逃げてしまった彼の想いも一緒に抱き締めるように、私はスザクに回した腕に力を込めた。


初出:10.05.01 / 収納:12.10.21

遠回りの恋。

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